19.「インボイスに備えよう!」
消費税は、商品の購入やサービスの提供を受ける消費者に最終的に負担させることを予定して立法された税金ですが、実際の納税は、消費税相当額を預かった事業者が行っていきます。
ただし、仕入や経費の支払いの際を支払った消費税相当額を控除して納付することで、税の累積を排除する仕組みがとられています。(仕入税額控除と呼ばれます)
改正によりインボイス制度が導入されると、インボイスの交付を受けない取引については原則的に仕入税額控除ができないこととなります。(経過措置期間、交付義務が免除される取引を除く)
本改正は税率の改正と並び、事業者への影響が非常に大きいため、制度の開始に備えていきましょう。
消費税の仕入税額控除とは? |
消費税の原則計算は下記の通り、課税売上に係る消費税額から課税仕入等に係る消費税額(「仕入税額控除」といいます)を差し引きした計算となります。
・消費税額 = ※①課税売上に係る消費税額 ― ※②課税仕入に係る消費税額(仕入税額控除)
仕入税額控除は、従来より無条件に認められているわけではなく一定の要件を備えた帳簿と請求書等の保存が求められています。
その帳簿や請求書の記載内容にについては、軽減税率の導入時の2019年10月~2023年9月30日迄は、現行の区分記載請求書等保存方式によることとされ、2023年10月1日以降は適格請求書等保存方式(インボイス制度と呼ばれるもの)によることとされています。
インボイス制度開始前に貴社が対応するべきこととは? |
インボイスを発行する場合とインボイスの交付を受ける場合とそれぞれの対応について、早目の準備が必要です!
【貴社が課税事業者で原則課税の場合】
上記※①課税売上に係る消費税について
適格請求書発行事業者(※3)となるか検討
上記※②課税仕入に係る消費税額(仕入税額控除)について
仕入税額控除の要件に留意する。
⇒インボイス等の記載のない請求書等は、原則的に認められないため、現在の取引についてインボイスが交付されるのか、インボイスが不要とされる取引(※4)なのか、経過措置の対象かも含めて検討。
また免税事業者との取引が多い事業者は、コストアップの要因となるため特に留意する必要があります。
【貴社が課税事業者で簡易課税の場合】
上記※①課税売上に係る消費税について
適格請求書発行事業者(※3)となるか検討
上記※②課税仕入に係る消費税額(仕入税額控除)について
仕入税額控除の要件は不要です。課税売上に係る消費税額から
みなし仕入率を利用し簡易的な計算となるため
【貴社が免税事業者の場合】
免税事業者として事業を継続か課税事業者の選択(課税事業者の選択は、令和5年10月1日~令和11年9月30日の属する課税期間を除き届出が必要です)
⇒課税事業者を選択した場合は、上記の原則課税、簡易課税のケースに沿ってご検討下さい。
⇒引き続き免税事業者を選択し、インボイス制度開始前において、消費税を別途請求してる場合は、利益(消費税相当額の金額)が変わってくる為、現行取引の価格設定については制度開始前の早期の検討が必要です。
※3 「適格請求書発行事業者」は課税事業者、免税事業者共に登録が必要です。2021年10月1日より申請受付が開始されます
※4 3万円未満の公共交通機関による旅客の運送等のように、適格請求書を交付することが困難な取引は、インボイスの交付義務が免除されており、帳簿の保存のみで仕入税額控除が可能です。
適格請求書発行に求められる記載事項は? |
①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
②取引年月日
③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④税率毎に区分して合計した対価の額(税抜又は税込)及び適用税率
⑤税率毎に区分した消費税額等
⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
不特定多数の者に対して販売等を行う小売業、飲食業、タクシー業等ついては、上記記載事項のうち⑥「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」及び④のうち「適用税率」又は⑤「税率毎に区分した消費税額等」を省略した適格簡易請求書を交付することができます。
★区分記載請求書と違い、記載事項に漏れがあった場合、受領者本人が請求書に自ら追記することは認められない為、正しい請求書の交付を発行元に依頼することとなりますので、留意が必要です!
6年間の経過措置とは |
インボイス制度開始後は、免税事業者や消費者からのインボイスの発行のない課税仕入については、原則として仕入税額控除ができませんが、下記の通り6年間は一定割合の控除ができる経過措置が設けられています。
・2023年10月1日~2026年9月30日 仕入税額控除相当の80%
・2026年10月1日~2029年9月30日 仕入税額控除相当の50%