7.新規開業の個人・法人共に使える旬の所得拡大促進税制をまずは使いましょう!

 

 個人の所得拡大(消費拡大)を図り、企業側の労働分配(給与の支給)を促すために、創設された税制ですが、中小企業にまだまだ浸透していない感が否めません。要件(給与を上げる)を満たすことができない企業が多いというのが実情です。

 前置きはさておき、新設法人や新規に開業した個人事業主の方はハードルが低い税制だと言えます。

 どんな要件を満たすと受けられるのか見ていきましょう!

 

対象者は?

  

  青色申告の法人・個人です。

 

適用対象年度は?

  

  法人・・・平成25年4月1日~平成30年3月31日までの間に開始する

       各事業年度

  個人・・・平成26年~平成30年までの各年

  ※設立事業年度、開業年度はOK

   解散事業年度、清算中の事業年度は不可 

     ※平成28年度改正により雇用促進税制との重複適用もOK

 

適用要件は?

  

 3つの要件(①②③)を全て満たすこと

 

基準年度(※1)と適用事業年度(個人の場合は適用年度)の給与支給額(※2)を比較し一定割合(※3)増加していること

 

 ※1 基準年度

  法人の場合・・・平成25年4月1日以後、最初に開始する事業年度の

          直前事業年度

 

  個人の場合・・・平成25年度

  必ずこの基準年度との比較になります!)

 

 ※2 給与等支給額

   国内の事業所において就労する従業員が対象となり、役員や役員の

  親族等は含まれません。また、給与所得(所得税法28条1項)の対象

  となる給与や賞与などが主な対象となり、非課税通勤手当は、原則と

  して除かれますが、事務処理の煩雑さを避けるため、継続的に非課税

  となる通勤手当含めて集計することも認められます。(措通42の12の

  4-1の2)

 

  ※3 一定割合

  (法人の場合)

   ・平成27年4月1日前に開始する事業年度2%以上

   ・平成27年4月1日~平成28年3月31日までの間に開始する

    事業年度3%以上

   ・平成28年4月1日~平成29年3月31日までの間に開始する

    事業年度4%以上(中小法人等3%以上)

   ・平成29年4月1日~平成30年3月31日までの間に開始する

    事業年度5%以上(中小法人等3%以上)  

     

         

適用事業年度(個人の場合は適用年度)の給与等支給額が前事業年度(個人の場合は前年度)の給与等支給額以上であること ⇒ 総額計算

 

 

適用事業年度(個人の場合は適用年度)の※継続雇用者の平均給与等支給額が前事業年度(個人の場合は前年度)の平均給与等支給額を超えていること ⇒ 一人当たりの計算(対象者を抽出後)

 ※継続雇用者・・・適用年度と前事業年度において給与の支給を受けて

          いる者のうち雇用保険の一般被保険者が対象となり

          高年齢者雇用安定法の継続雇用制度対象者は除き

          す。

 ※平成29年度税制改正により資本金1億円超の大企業は「前年度比2%以

  上増加」へ変更されました 

 

控除額は? 

 

(適用事業年度の給与等支給額-基準事業年度の給与等支給額)×10%

 ※但し税額控除のため、法人税・所得税共に税額自体が発生していない

  場合(利益が出ていない場合)は、控除することはできません。

  また限度額もあり、法人税額・所得税額の10%(中小企業者等は

  20%)が限度となり、他の税額控除のように、繰越しはありません。

 

 ※大企業について適用要件が平成29年度改正により変更のため、③の

  要件を満たさない場合は、適用除外となりますが、満たす場合は従来

  の控除額10%に加え、前年度分からの増加額の「2%」上乗せされ

  ます。

 

所得拡大促進税制の拡充(中小企業者のみ)

  

 平成29年度の税制改正により、前年度比2%以上増加の場合には、従来控除額に加え、給与等支給総額の前年度分からの増加額の「12%」上乗せされます。

※適用期日 平成29年4月1日以後に開始する事業年度

      (個人は平成30年分以後の所得税について適用)

 

なぜ新設法人や新規開業者は使用しやすいのか?

  

 平成25年4月1日以後に新設した法人や平成26年1月1日以後に開業した個人事業主は基準事業年度(基準年度)が無いため、①の要件はどう判定していくのかというと、設立事業年度(設立年度)の給与等支給額の70%(措法42の12の4②四ハ)定められており、設立当初よりスタッフを雇用している場合は必ず増加額が生じるため、この制度をぜひ活用しましょう