9.消費税は経費になりますか?
タイトルにある通り、実は「消費税は経費になりますか?」という問い合わせが多いです。
自社で会計処理し消費税(地方消費税を含む。以下「消費税等」とします)を税込経理されてきた方で新たに当事務所へご依頼頂く場合に多い質問です。
税込経理方式では、確定申告分の消費税等を「租税公課」という科目で計上するため、そのような疑問をお持ちになられたのかと思います。会社の利益(所得)計算においては、一般的な取引形態ではどちらの経理方式も同じ金額です。(但し消費税計算上の端数については、僅少ですが発生します。)
以下、ご参照下さい。
区分 | 税込経理方式 | 税抜経理方式 |
①商品8,000円 (税抜)を掛けに より仕入れた
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(仕入)8,640 (買掛金)8,640
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(仕入)8,000 (買掛金)8,640 (仮払消費税)640 |
② ①の商品を 10,000円(税抜) で掛けにより 販売した
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(売掛金)10,800 (売上)10,800 |
(売掛金)10,800 (売上)10,000 (仮受消費税)800 |
③決算時 | (租税効果)160 (未払消費税)160 |
(仮受消費税)800(仮払消費税)640
(未払消費税)160 |
※それぞれの利益は
売上高 10,800 売上高 10,000
売上原価 8,640 売上原価 8,000
租税公課 160 租税公課 -
利益 2,000 利益 2,000
税抜経理、税込経理の特徴は以下のようになります。 |
《税抜経理》
・少額減価償却資産(10万円未満)、一括償却資産(20万円未満)、償却資産税、交際費等の金額基準の判定時に消費税を含めず判定できる。
《税込経理》
・中小企業経営強化税制などの特別償却や税額控除などは、○○円以上という金額基準があるので、消費税を含めて判定できる。
・手書き経理の場合は、事務処理の負担が少ない。
また、税抜経理は消費税等を関係させない企業本来の損益が明確にわかること、そして消費税等の納税資金の管理面を考えても消費税率の引き上げに伴い、より重要性が増すのではないでしょうか?
税込経理によると、瞬時に貸借対照表からの読み取りは不可能ですが、税抜経理によると資産の部に「仮払消費税」負債の部に「仮受消費税」が表示され、両者の差額が納付するであろう消費税等(簡易課税による場合を除く)となるからです。資金管理の面からも当事務所では、税抜経理をお勧めしております。
「消費税は経費になりますか?」実はここでもっと考えなければいけないことは、簡易課税を選択されていて、税抜経理をされている場合、上記の表③の決算時の際の精算仕訳の際、益税⇒雑収入が出ている場合は、問題がないのですが、そうでない場合、つまり原則課税が有利な場合は、実際に支払った消費税等(仮払消費税)では不足しているので差額は会社が納付していかなければならないこととなります。この差額は税率が大きくなればなるほど広がります。
③決算時
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(仮受消費税)800 (仮払消費税)640 (未払消費税)150 (雑収入)10
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(仮受消費税)800 (仮払消費税)640 (租税公課)10 (未払消費税)170
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↓
「経費になりますが、差額不足分
は会社が納付することとなる
為、決算時の要検討項目の一つ
です。」(課税売上割合が80%未
満の際の20万円以上の資産に係
る控除対象外消費税等を除く)
簡易課税制度をご選択の事業主様は、今一度、選択されている制度が果たして御社にとって有効なのかどうか検討されてみてはいかがでしょうか?